「人は環境の子なり」私は色紙によく書きます。私は遺伝の法則に従った生理的ないろんな条件の遺伝の問題を少しも疑いません。
しかし、能力は刺激に対して身についていく生理的なもので、刺激がなければ、なにも育ちません。才能は生まれつき人間の中にある、という世間一般の考え方は根本的に違います。すべての能力は、心も感覚も含めて、外の環境に適応して身についていくものです。これが私の考え方です。
刺激がくり返されると、その刺激の良い悪いに関係なく、その刺激に適応する能力が育っていきます。刺激がなければ、能力は育ちません。このことを私は「能力の法則」と名付けました。
赤ちゃんは肉体の成長とともに、まわりの刺激に反応していき、能力を形づくっていきます。いい刺激があれば好ましい能力が育っていきます。本来素質があるのかではなく、生まれた子供の成長に必要な条件が繰り返されると、それに対する力ー能力が育ちます。みんなすばらしい生命の力とその働きによるものです。
このような生命のすばらしさに気付き、生命のすばらしさを発露させようというのが、私どもの主張であり、目的です。
「遺伝の法則と能力の法則」
音楽というものは、人間の作った文化の中で、もっともすばらしい文化だといえます。
なぜならば、何百年前になくなったバッハやモーツァルトの音楽を聞けば、バッハの、モーツァルトの心が生きてそこに存在し、われわれはそれに打たれるからです。
はじめはメロディーしかわからないでしょう。でも、だんだん聞いているうちに、バッハの、あの大きな、いわゆる宗教的感覚や人柄まで、みんなわかるんです。
モーツァルトにしてもそうです。その愛に満ちた人柄が、彼の音楽の中にもこもっているのです。
音の中に、バッハやモーツァルトは今もなお生きています。
これが音楽の美しさ、すばらしさなのです。
小さいときからバッハに育てられていれば、バッハのあのノーブルな魂、大きい人柄、宗教的な感覚がその子供の中に育ちます。
モーツァルトに育てられていれば、モーツァルトのやさしい愛に満ちた魂も人柄も子どものものになってしまいます。
子どもの生命がそれをキャッチして、その高さまで上ってしまうのです。これが音楽のすばらしさです。
音楽を感じる心は人間を感じる心です。
『才能開発は0歳から』より
「りっぱにバイオリンをひこうと努力することによって、どんなむずかしいことでも努力によって克服しようという能力を育てれば、どんなことでも平気でやってのけられる力が生まれるでしょう。バイオリンのおけいこによって、その力を作り上げましょう」
つまり、大事な人間性、高い心を育てるために音楽が存在する、というふうにも考えられるのです。
『才能開発は0歳から』より